コピー機・複合機のお役立ち情報
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複合機はオフィス機器として欠かせないものとなっていますが、その業界はどんな様子のところなのかを知っているでしょうか。日本における企業成長を支えてきた複合機・OA機器業界について市場規模や各社のシェアなどの現状と課題、そして将来の動向について紹介します。この記事を通して複合機業界の全体像やトレンドを把握して役立てましょう。
まず複合機業界の概要についてビジネスモデル・市場規模・メーカーシェア率3つの観点から見ていきましょう。それぞれどのような傾向があるかを理解しておくことは業界の現状や今後の展望を把握する上で不可欠なのでしっかりと読み進めて下さい。
複合機業界のビジネスモデルは消耗品の販売とメーカーによる保守・メンテナンスサービス、MPSによって利益を上げる形になっているのが特徴です。複合機自体は実は販売してもあまり利益にはならない価格設定になっていて、各社の売上利益は複合機で使用する各種トナーや用紙などの消耗品の販売により得られています。トナーは製造が簡単なので低コストで大きな利益幅を設けて販売できるというメリットがあるからです。ただ、純正品以外のトナーも存在しているのでユーザーを獲得するための戦略が必要であり、純正品以外のトナーを使うとメーカー保証の対象外にするとといった措置を取るのが標準的になっています。
このように複合機業界は本体を安く販売し、ユーザー数を増やして消耗品や保守サービスなどで継続的に稼ぐ形式のランニング収益ビジネスモデルとなっています。
複合機業界の規模は2017年〜2018年の主要対象企業11社の売上高の合計に基づくデータによるとかなり成熟した業界になっていることがわかります。業界規模は6兆7028億円で130業界中で38位に位置しているので規模自体は比較的大きいものの、伸び率や収益性については問題を抱えています。規模の伸び率は-4.2%で130業界中122位、収益性は3.4%で130業界中90位という低い水準で横ばいになっているのが実態です。複合機業界で働いている人の平均年収は750万円で130業界中19位と高水準になっているのは確かですが、業界自体に目を向けると成熟しきっている影響で今後の急激な伸びは期待しにくいというのが事実です。
複合機業界における各メーカーの国内シェア率について確認しておきましょう。複合機(レーザープリンター)の全社合計出荷数は140万9000台に上っています。複合機業界で3大ビッグメーカーと呼ばれているのがキャノン、リコー、ゼロックスで、2015年まではリコーがトップを走っていました。しかし、2016年からキャノンが伸びを示し、現在ではシェア率がキャノン(25.9%)、リコー(21.9%)、ゼロックス(13.9%)となり、キャノンがさらに伸びてきているのが実態です。これに続くのがブラザー(13.9%)、京セラグループ(5.7%)で、堅実にユーザー層を獲得しています。
複合機の特徴はメーカーによって違いがあるものの、基本的な性能にはあまり差はありません。そのため、シェア率が高いメーカーが安心や信頼を獲得しやすく、市場ではより有利な立場になる傾向があります。
このような複合機業界の概要を踏まえて、実際に業界の現状や課題がどうなっているのかを紹介します。複合機業界の今後の展望を理解する上で役に立つ知識をつけましょう。
全国的にどのオフィスでも複合機を使用している状況があるにもかかわらず、実は市場は全体として縮小しているのが現状です。これは複合機が普及しきっていることに加え、日本国内のトレンドとしてペーパーレス化が進んでいるのが原因で、新参の企業では複合機を導入しないケースも目立ってきています。国内市場で大きなビジネスチャンスを得るのが難しいことから、複合機業界の各社では海外展開で数字を伸ばしているのが実態です。
シェア率トップ3社であるリコーでも1156憶円の赤字に陥るなど苦しい状況があり、リコーが8千人の削減、ゼロックスが1万人の削減といった形で大幅なリストラなどによる対応をするなど経営状況の悪化を打開するための方策を見つけるのに苦戦しています。
複合機業界では市場全体の縮小に対してどんな戦略展開をしていくかが大きな課題となっています。各メーカーが独自の経営戦略を立てて打開を図っているものの、新たにシェアの開拓に成功している事例はほとんどありません。複数の事業を同時に展開しているキャノンなどの場合には経営上それほど痛手にはならないものの、リコーのように複写機事業に依存している場合には早急な体制の改善が急務となっているのが実態です。今までの単純なランニング収益ビジネスモデルでは経営が成り立たなくなってしまうリスクが高く、新しいビジネスモデルに基づく事業方針を立てることが大きな課題となっています。
このように複合機業界では日本などの先進国におけるペーパーレス化の進行と複合機の普及しきっている状況があるため市場の拡大は困難だと考えられます。発展途上国ではまだ普及の余地があるのは確かですが、いずれはペーパーレス化が進むと予想されることから一時しのぎとしての市場開拓にしかならないでしょう。複写機業界は30年後に半分以下の市場規模になってしまうという予想も立てられているのが現状で、OA機器本体の販売も頭打ち状態になるのはほぼ明白になっています。この動向予想が現実となれば、リコーの大手であっても2030年までに再度大規模リストラが起こる可能性があるでしょう。
今後は後述するように他分野への進出も活発に行われていくと考えられますが、実効性は未だに担保できる状況ではありません。MPSなどのオフィス一括管理やITを駆使したサービスによる定常的な利益の獲得や、新たな事業拡大や各社との連携による市場開拓がより一層必要になる業界と言えるでしょう。
現状として複合機業界全体としては販路の拡大と会社同士の買収や提携が進められています。発展途上国への複合機本体の輸出や保守・メンテナンスサービスなどでユーザーを獲得して利益を維持向上しようと考えている企業は未だに多いのが実態です。また、独自の技術やシェアでは経営展開が難しくとも買収によって新しい技術を吸収したり、提携によりシェアを拡大したりすることはできます。会社規模での取引によって経営状況の改善を図っていることも多くなっているのが現状です。
一方、複合機に頼らずに他分野へも目を向けて成長分野の発見や創出を図り、新しいビジネスモデルに基づく事業展開が行われています。医療業界へのサービスのシフトやオフィスでのITサービスの提供などが代表例で、主要メーカー3社が大きな展開を見せています。今後も革新的なアイデアやイノベーションにつながるような発想の転換が求められている業界です。
複合機業界は日本国内の市場規模が比較的大きいのは確かですが、成熟しきってしまっていて頭打ちになり、さらにペーパーレス化によって市場規模の縮小が進みつつあります。海外の発展途上国ではまだ展開の余地があるものの、長い目で見ると新しい戦略で事業を進めていくことが必要な業界です。ただ、オフィスにおける複合機には根強い需要があるのも確かであり、今までずっと日本企業の成長を支えてきた実績もあります。現状としては苦戦を強いられているのは事実ですが、イノベーション戦略の展開によってどのような動きを見せるのかは予想が難しく、今後の動きから目を離すことはできません。